厚生労働省は2018年度から、性同一性障害(GID)の方々が行う「性別適合手術」について、公的医療保険の対象とする方針を固めました。
これにより、現在100万円以上はかかるといわれる日本国内での性別適合手術の費用について最大3割の自己負担で済むようになることになります。
今回は、このテーマについて考えてみたいと思います。
目次
性別適合手術を望む方々
そもそも性別適合手術を行うケースとはどういう時なのでしょうか。
人により価値観や考え方は異なりますので、一概に言えるものではもちろんありません。
あくまでも、一つの例としてとらえていただければと思います。
戸籍上の性別を変更するための条件
性同一性障害(GID)の方々が戸籍上の性別を変更したいと望んだ場合の条件は、2004年施行の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例」という)により以下のように定められています。
- 20歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
つまり上記の4と5の条件を満たすためには、性別適合手術を受ける必要があるということになります。
心と体の性が不一致を解消したい
心と体の性が不一致である性同一性障害(GID)の方々の中には、自身の体がどうしても許せず心の性と一致させたい、戸籍を変更してパートナーとともに暮らしていきたい等々の理由で性別適合手術を希望される方も少なくありません。
どの程度そのように感じるかは個人により差があるわけですが、耐えがたき感情をお持ちになる方もおり、当事者にとっては大変重大な問題であるのですね。
また、実際に手術を受けるには、2人以上の医師により性同一性障害であるとの診断を受ける必要があります。
経済的に身近になるのか?
現在はかなり高額な費用も
現状は性別適合手術に係る費用は、健康保険などの「公的医療保険」の対象外となっています。
つまりかかる費用は全額自己負担となっています。
費用はだいたい日本国内で受ける場合は100万円以上とかなり高額。経済的にはかなり高いハードルとなります。
一般的には海外で手術を受ける場合の方が費用は安いようで、海外で手術を受ける方も多くいます。
公的医療保険の対象となると自己負担3割
あなたが風邪をひいたとして病院で診療を受けたら、その医療費は健康保険や国民健康保険などの「公的医療保険」の多少となり、あなたが負担すべき医療費は3割分(年齢の区分により異なる)となります。
性別適合手術が公的医療保険の対象となれば、全額自己負担であった費用が3割となり更に3割でも高額の場合は「高額療養費」の対象となるわけです(高額療養費についてはこちら)。
経済的にはハードルが大きく下がることは間違いありません。
問題点も・・・
国としても、近年のLGBT’sの理解が広まったことからこのような施策、ということなのでしょうが、手放しに喜べるという事でもありません。以下に注意点を。
ホルモン療法は対象外
当然ながら生殖腺の機能を無くすわけですから、ホルモン療法は欠かすことができません。
今回の施策については、ホルモン療法に係る部分の費用については、公的医療保険の対象とはなりませんので注意が必要です。
そもそもの話として
費用面の話ばかりに今回はなりましたが、そもそもの話として性別適合手術は体にも大きな負担を強いる手術です。
さらに一度行ってしまうと引き返すことが困難です。
現状において戸籍上の性別変更を行うと、元に戻してくださいとなった場合簡単にはいかないようです。
実際に手術に踏み切った方々で、術後、自分がイメージしていた男性(女性)の世界が実際は違っていて後悔をしている、というケースも少なくはありません。
一度しかない自分の人生。
どのように決断するかはあなた自身の自由です。しかし、性別適合手術を受けるにあたっては、様々な面から慎重に検討し、支援機関の専門家に相談をするなど時間をかけて選択をしていくことが大切ということを、覚えておいたほうが良いでしょう。